オバマ大統領のマニフェスト~文化政策~

覚書として・・・便箋鉛筆
ニッセイ基礎研究所の吉本光宏研究員の眼より一部抜粋

オバマ大統領が力説されているのが芸術教育への再投資である。マニフェストでは「グローバル経済の中で競争力を保つため、米国はこの国を繁栄させてきた創造性とイノベーションといったものに、再び新たなエネルギーを投入しなければならない。そのため、我々は芸術教育によって培われる子どもたちの創造的な思考能力を育成すべきである」とし、「芸術教育の目的は芸術家を育成することではない。それが芸術家の誕生に結びつくこともあるが、芸術教育の真の目的は、この自由な市民社会において、生産的な生活を営める人間を育成することである」という全米芸術基金理事長の発言を引用している。その上で、「芸術教育が他の教科の成績向上にも効果があることが研究で明らかにされた」と、芸術教育が子どもたちの基礎学力の向上に効果があることが強調されている。

英国でも、今年から全小中学校で「Find Your Talent」という週5時間の芸術教育が創設された。今後の経済の牽引車として世界各国が注目する創造産業を振興し、国際競争に打ち勝つ、という構想がその背景となっている。オバマ米国大統領の文化政策は、いわばこの英国モデルを後追いするものでもある。

そして、このマニフェストを見ると、何よりも文化政策を国家戦略の中に明確に位置づけている点が注目できる。文化政策はもはや芸術や文化のためだけのものではない。教育、外交、国際的プレゼンスなど、国全体の政策にとって重要な戦略パーツとなっている。そうした潮流は世界に広がっている。例えば、隣国の韓国でも、1人当たりの文化予算は日本の5倍に達しているが、それは文化政策を国の重要施策に位置づけているからである。

一時的に延期されたとはいえ、やがて訪れる衆院選では、与党、野党ともオバマ次期米大統領にならって、文化政策に関する骨太のマニフェストをぜひ示してほしいものである。