甦る古布 アトリエ遊々

▲アトリエ遊友
↓3年前に日本海新聞へ寄稿された時の文章です


骨董好きな私たちは、よく京都や名古屋、富山等の骨董祭の市を歩き、楽しんでいたものです。ある時、骨董品の下に敷いてある藍の木綿の布が目に留まり、これが古布収集の始まりとなりました。私が裁断師であったことと、妻の幸江は洋裁ができましたので古布を甦らそうと10年前に夫婦でアトリエ遊々という工房を立ち上げました。

藍染木綿の切布は鮮やかな藍、少し色落ちした藍、何枚もつぎ当てした藍の木綿は其々がとても温かみのある味わい深いものです。中には衣類を長持ちさせる方法から考え出された刺し子の布があり、古布の好きな人であればたまらないものです。藍が日本人に一番よく似合う色だと思いますので主に藍の綿布をベースにした作品が多くなります。絣や縞、紬、日本の古い着物や帯に触れ、なんともいえない懐かしさや温かさを感じます。

始めたばかりの頃は古布を探しに行ってもなかなか手に入れることができませんでした。それからは骨董市や骨董店に足繁く通うことでやっと店主との信頼関係を築くことができ

店主から声が掛った時には夫婦で飛び上がって喜んだものです。今では珍しい布や質の良い古布が入荷すると声がかかるようになり、貴重な布も手に入るようになりました。

二つとない貴重な古布をリメイクするためには「ほどき」から始めます。着物、油単(ゆたんとは、タンスをホコリや汚れから守る専用のカバーです)風呂敷、掻巻、かいまきとは綿が入った夜着、着物の形に作った掛け布団等を丁寧にほどき、洗濯をします。そして穴やシミがないかを見ながらアイロン掛けをして、やっとリメイクのデザインに入ります。作品は着物巾を生かした直線裁断で着やすく個性的な仕上がりになるよう心がけています。この度は古布だけでなく、新しい白絹地で柿渋染めにも挑戦しました。シルクの柔らかな風合いと柿渋の味わい深い色合いがとてもお洒落な作品に仕上がりました。また、お酒を造る際に使用される酒袋をリメイクしたリバーシブルコートはなめし皮の風合いがあり自信作です。(朝日現代クラフト展で初出品、初入選)物のあふれた現代に今一度古き良き物をもう一度・・・これからも頑張って甦らせていきたいと思います。

多くの方々に手にとってご覧いただければ幸いです。

 

アトリエ遊々

  中屋忠士・中屋幸江 福井県在住

 

古布創作展  ~甦る古美の魅力~