寺島 節朗 日本画展

絹本(けんぽん)絹に染色して、
絵を描いたものです。
よく、軸ものにしたりします。
もちろんこのお目出度い作品も
掛け軸にと注文があったそうです。

寺島 節朗 日本画展


『涛』なみ 150号


『道』 150号

日本海新聞掲載より一部抜粋

最も注目されるのは『道』『横断歩道』の連作である。画面いっぱいの黒ずんだ道路に横断のの白線マークや、黄色いセンターラインの標示。車や人によって標示はすでに磨耗し、窪みには降る雨の水たまりができている。落剥の道はいまだれも渡らず、振り返る人もいない。水たまりには携帯電話のアンテナや、ネオンなどの明かりがわずかに映る。
 華やかなネオンやアンテナの陰で、忘れられた道の対比は、現代社会から取り残された存在や弱者を象徴している。だが、生きてゆかねばならない。それはまた、現代と重ね合わせた自己投影であり、画家の矜持でもあろう。
 勝ち組、負け組みなどと愚劣な二分法で裁断し、理念より勝ち馬に便乗するのが平然と流行する時代。しかし社会とのギャップを感じ、マイナーの苦渋を味わい、たとえネガティブであろうとも、服従しない批評精神があればその方がよほど健全なのだ。
 欠けたもの、無視されたもので語るのは、実は柳宋悦が唱えた割り切れない「奇数の美」にも通じる。寺島節朗は「負」の視点から、単に外界を写し取るのではなく、あくまでも絵画として半ばシュールな現代化を果たした。しかも己の美学によって、視覚を知的な感覚情報にまで高めたのである。

角秋 勝冶